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台本:朗読(3)噂


♪ 朗読を聞く ♪
朗読:清澄 ユユキ(雪とうさぎと子守唄。


件の盗賊達を退けてからしばらく後。
奇妙な噂が島に広がっていた。

小さな影が急な斜面を駆け上がっていくのを見た。
畑の果物がほんのわずかだけ荒らされていた。

どうせ小さい動物の仕業だろうと、最初の頃は島の人々も
世間話のひとつにしか考えていなかった。

しかし、そんな話をする者は
次第に増えていき、しかも目撃情報は
島の中を少しずつ移動していった。

いつしか誰もが、自分の畑もそんな痕があった、とか、
自分もあの小さな影を見かけた、とか話をした。

これといった大きな被害もなかったが、
あまりにも噂の出所が増えてきたため、
騎士団もついに動き出した。

平和な日々が続いていることには変わりはないが、
人々の生活を浮き足立たせていることも間違いない。

そんなある日。
とある町外れの廃屋に
数人の盗賊が巣くっているという情報が入る。

ところが。
騎士団がそこへ駆けつけた時に見たのは
鋭利な刃物で急所を切りつけられた死体の山だった。

全員、失血死だった。