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♪ 朗読を聞く ♪
朗読:清澄 ユユキ(雪とうさぎと子守唄。)
件の盗賊達を退けてからしばらく後。
奇妙な噂が島に広がっていた。
小さな影が急な斜面を駆け上がっていくのを見た。
畑の果物がほんのわずかだけ荒らされていた。
どうせ小さい動物の仕業だろうと、最初の頃は島の人々も
世間話のひとつにしか考えていなかった。
しかし、そんな話をする者は
次第に増えていき、しかも目撃情報は
島の中を少しずつ移動していった。
いつしか誰もが、自分の畑もそんな痕があった、とか、
自分もあの小さな影を見かけた、とか話をした。
これといった大きな被害もなかったが、
あまりにも噂の出所が増えてきたため、
騎士団もついに動き出した。
平和な日々が続いていることには変わりはないが、
人々の生活を浮き足立たせていることも間違いない。
そんなある日。
とある町外れの廃屋に
数人の盗賊が巣くっているという情報が入る。
ところが。
騎士団がそこへ駆けつけた時に見たのは
鋭利な刃物で急所を切りつけられた死体の山だった。
全員、失血死だった。